「姿勢を意識しているのに、気づくと背中が丸まっている」
「ストレッチや整体を受けても、すぐ猫背に戻ってしまう」
そんな経験はありませんか?
多くの方は、
猫背=背中の問題・筋力不足・姿勢意識の弱さ
だと思っています。
しかし、臨床現場で猫背の方を見ていると、
ほぼ必ず共通している“ある問題”があります。
それが、
「呼吸が姿勢を支える役割を果たしていないこと」です。
この記事では、
なぜ呼吸が猫背と深く関係しているのか
なぜ姿勢を意識しても治らなかったのか
理学療法士の視点から、わかりやすく解説します。
CONTENTS
猫背は「姿勢の問題」ではなく「支えられない体」の状態

猫背というと、
- 背中が丸い
- 肩が前に出ている
- 首が前に突き出ている
といった「見た目」をイメージしがちです。
しかし、猫背の本質はそこではありません。
猫背の正体は、
背骨を安定させる仕組みが働いていない状態です。
実際、近年の研究では、猫背を含む姿勢不良が
・筋肉のアンバランス
・血流の低下
・神経への圧迫
を引き起こし、肩こりや腰痛、慢性的なだるさ・倦怠感を助長することが示されています。
つまり猫背は「見た目の問題」ではなく、身体の機能低下や不調の慢性化と深く関わる状態なのです
(Kendall et al., Muscles: Testing and Function, 2019)。
そしてその仕組みの中心にあるのが
呼吸です。
呼吸は「酸素を吸う動作」ではない
多くの人が誤解していますが、
呼吸は単に酸素を取り入れるための行為ではありません。
呼吸は体幹を内側から支える運動
呼吸は、
- 横隔膜
- 腹横筋
- 多裂筋
- 骨盤底筋
といった体幹のインナーマッスルと連動して行われる運動です。
特に横隔膜は、
体幹を上からフタのように支える非常に重要な筋肉です。
正しく呼吸が使えていると、
- 体幹の内圧が高まる
- 背骨が内側から支えられる
- 無理なく姿勢を保てる
という状態が自然に作られます。
つまり姿勢は、
筋トレで無理に保つものではなく、呼吸圧で支えられているのです。
猫背の人に多い「呼吸できているつもり」問題

猫背の方に呼吸をチェックすると、
多くの方がこう言います。
「呼吸はちゃんとできています」
しかし実際に体を評価すると、
- 肋骨がほとんど動かない
- 横隔膜が下がらない
- お腹が膨らまず、胸や肩だけが上下する
いわゆる首・肩で吸う浅い呼吸になっているケースが非常に多いです。
浅い呼吸が姿勢を崩す理由
この呼吸パターンでは、
- 僧帽筋や首周りが常に緊張する
- 肩がすくみやすくなる
- 頭が前に突き出やすくなる
結果として、
猫背を助長する姿勢パターンが無意識に作られてしまいます。
なぜ猫背の人は呼吸が浅くなるのか
猫背と呼吸の浅さは、偶然ではありません。
胸郭(肋骨)が潰れている
猫背姿勢では、
肋骨が下がり、前後に潰れた状態になります。
この状態では、
横隔膜が十分に上下できず、自然な呼吸が行えません。
肩甲骨の位置が崩れている
肩甲骨が前に引き出され、前傾・外転すると、
肋骨の動きはさらに制限されます。
肩甲骨と胸郭は連動して動くため、
肩甲骨が安定しないと呼吸も浅くなります。
体幹の安定性が低下している
腹部の安定性が低下すると、
- 呼吸と同時に体幹を保てない
- 背骨を内側から支えられない
結果として、
体は呼吸と姿勢を切り離して処理するようになります。
呼吸が変わらない限り、猫背は必ず戻る
ここが最も重要なポイントです。
- ストレッチしても戻る
- 整体で整えても戻る
- 姿勢を意識すると疲れる
これらの原因は、すべて同じです。
👉 呼吸が変わっていないから
一時的に姿勢を整えても、
呼吸が浅いままでは体幹は支えられません。
体は最終的に、
「一番楽な位置」=猫背姿勢に戻ってしまいます。
呼吸が変わると、姿勢は頑張らなくても変わる
正しく呼吸が使えるようになると、
- 体幹が自然に安定する
- 肩甲骨が落ち着く
- 背骨がスッと伸びやすくなる
「姿勢を良くしよう」と意識しなくても、
姿勢が崩れにくい体が作られます。
実際、呼吸へのアプローチが姿勢改善につながることは研究でも示されています。
韓国・漢陽大学によるランダム化比較試験(2021)では、
猫背・巻き肩傾向のある被験者に対し、週2回・4週間のピラティス介入を行った結果、
・胸式呼吸の改善
・酸素摂取量の向上
・姿勢指標の有意な改善
が認められました。
胸郭が前方に傾き、肋骨が広がらない姿勢では呼吸が浅くなりますが、
呼吸機能が回復することで、姿勢そのものも改善していくことが示唆されています。
これが、
猫背改善において呼吸が最優先される理由です。
猫背改善には「呼吸を含めた再教育」が必要
とはいえ、
- 自分の呼吸が正しいか
- どこが使えていないのか
- 姿勢とどう連動しているのか
これを一人で判断するのは簡単ではありません。
臨床現場では、
- 肩甲骨の使い方
- 体幹の安定性
- 姿勢のイメージ
- 視覚・バランス感覚
など、複数の要素が同時に関係しているケースがほとんどです。
猫背が治らない人には、
いくつかの共通した身体の特徴があります。
▶ なぜ猫背は治らないのか?理学療法士が現場で必ず見る6つの共通点
猫背を根本から整えるために知っておいてほしいこと
猫背は、
- 意識が足りないから
- 筋トレが足りないから
起きているわけではありません。
多くの場合、
呼吸が姿勢を支える役割を失っていることが根本原因です。
「いろいろ試したけど変わらなかった」
「自分は重症かもしれない」
そう感じている方ほど、
まずは呼吸という視点から体を見直すことが大切です。
猫背の全体像や、
なぜストレッチだけでは治りにくいのかについては、
こちらの記事で詳しく解説しています。
