「腰痛があるけれど、家で少し身体を動かした方がいいのかな」
「動画を見ながら運動して、逆に腰痛が悪化しないか不安」
そんな方も多いと思います。
結論からいうと、重篤な病気が否定されている慢性的な腰痛では、自宅で身体を動かすことも腰痛改善の選択肢になります。
慢性的な腰痛に対して運動療法は推奨されており、ピラティスについても痛みや身体機能の改善を支持する研究があります。
ただし、大切なのは「腰痛に効く3種目」を覚えることではありません。
同じエクササイズでも、腰を反って行う人、股関節を使って行える人、動くと痛みが強くなる人では意味が変わります。
自宅でピラティスをするときほど、
「何をするか」
だけではなく、
「自分がどう動いているか」
を確認することが重要です。
この記事では、腰痛がある人でも比較的取り組みやすい3つの運動と、自分の身体に合っているかを判断するポイントを理学療法士の視点から解説します。
ピラティスを始めてもよい状態なのか不安な方は、先に腰痛がある人がピラティスを始める前に知っておきたい5つの注意点をご覧ください。
腰痛がある人の自宅ピラティスで大切なこと
腰痛がある人が自宅で運動するときに、「腹筋を鍛えなきゃ」「腰を柔らかくしなきゃ」と考える必要はありません。
腰痛改善のための運動にはさまざまな方法があり、運動療法全体として慢性腰痛への有効性が示されています。
一方で、「この種目だけがすべての腰痛に最も効果的」と言えるわけではありません。
そこで自宅では、
- 呼吸しながら体幹を支えられるか
- 股関節を使って動けるか
- 腰だけで動きを作っていないか
- 運動後に症状が悪化していないか
を確認しながら行います。
これから紹介する3つの運動も、「この3つをやれば腰痛が治る」という意味ではありません。
自分の身体の使い方を確認するための、比較的負荷の低い運動として使ってください。
自宅でできる腰痛ピラティス3選
1.360°呼吸で体幹を支える感覚を確認する
まずは仰向けで呼吸を確認します。
腰痛がある人の中には、「お腹に力を入れよう」とするあまり、息を止めたり、お腹を強くへこませ続けたりする人がいます。
目標は、お腹を固め続けることではありません。
呼吸をしながら、身体を支えられる状態をつくることです。
やり方はシンプルです。
- 仰向けになり、両膝を立てます。
- 腰は床へ強く押しつけず、楽に呼吸できる位置にします。
- 鼻から息を吸い、お腹の前だけでなく脇腹や背中側まで広がる感覚を確認します。
- 口からゆっくり息を吐きます。
- 息を吐いたあとも、お腹を強くへこませたまま固めないようにします。
5呼吸程度から始めてください。
ここで確認したいのは、
「腹筋に効いているか」
ではなく、
「息を止めずに身体を支えられるか」
です。
強く腹部をへこませようとして首や肩に力が入る場合は、一度力を抜いてやり直します。
2.ブリッジで腰ではなく股関節を使う
次は仰向けから骨盤を持ち上げるブリッジです。
この運動で確認したいのは、どれだけ高くお尻を上げられるかではありません。
腰を大きく反らせず、股関節を伸ばす動きを使えるかです。
- 仰向けで膝を立て、足を腰幅程度に開きます。
- 息を吐きながら、足裏で床を押します。
- お尻をゆっくり持ち上げます。
- 腰を反らせて高さを出さず、肩・骨盤・膝が無理なくつながるところで止めます。
- ゆっくり骨盤を床へ戻します。
まずは6〜10回程度で十分です。
「もっと高く上げよう」とすると、股関節ではなく腰を反って高さを作る人がいます。
お尻より腰にばかり負担を感じる場合は、高さを半分程度まで下げてみてください。
それでも腰痛が強くなるのであれば、今はこの運動を繰り返さない方がよいでしょう。
大切なのは種目を完遂することではなく、腰以外の場所も使って身体を動かせることです。
3.四つ這いロックバックで股関節から曲がる
床の物を拾ったり、しゃがんだりすると腰が痛む人には、「身体を曲げる=腰を曲げる」動きになっている人がいます。
そこで確認したいのが、股関節を使って身体を折りたたむ動きです。
- 四つ這いになります。
- 手は肩の下、膝は股関節の下あたりに置きます。
- 背中を無理にまっすぐに固めず、楽な位置を探します。
- その姿勢から、お尻をゆっくり後ろへ引きます。
- 痛みの出ない範囲で戻ります。
8〜10回程度、ゆっくり繰り返します。
このとき、
「お尻をかかとまでつける」
ことが目的ではありません。
お尻を後ろへ動かしたときに、股関節が曲がっているかを確認します。
腰だけが大きく丸まる、左右どちらかへ骨盤がずれる、途中から腰痛が強くなる場合は、動く範囲を小さくしてください。
このような動きは、床の物を拾う、しゃがむといった日常生活にもつながります。
動画を見ながら一緒に確認したい方へ
文章だけでは動き方が分かりにくい方は、動画を見ながら一緒に確認してみてください。
大切なのは、動画とまったく同じ形にすることではありません。
腰に痛みを感じながら無理に可動域を広げたり、回数をこなしたりせず、自分が無理なく動ける範囲で行ってください。
動くほど腰痛が強くなる場合や、運動後に症状が明らかに悪化する場合は、その運動を続けず、負荷や動き方を見直しましょう。
3つ全部やる必要はない
「腰痛にはこの3種目」と書いてあるからといって、3つすべてを毎日こなす必要はありません。
たとえばブリッジは楽にできるのに、四つ這いでお尻を後ろへ引くと腰痛が強くなるのであれば、その反応を無視して回数をこなす必要はありません。
運動は、
「できたか・できなかったか」
ではなく、
「その動きをしたときに身体がどう反応したか」
を見るためにも使えます。
自宅で行う場合は、一度にたくさんの運動を追加するより、少ない種目から身体の反応を確認した方が判断しやすくなります。
自宅ピラティスを続けてよいか確認する3つのポイント
動くほど痛みが強くなっていないか
1回目より5回目、5回目より10回目と、運動を繰り返すほど痛みが強くなる場合は、そのまま続けないでください。
可動域、回数、姿勢を調整します。
終わったあとに普段より動きにくくなっていないか
運動後に、
- 立ちにくくなった
- 前屈しにくくなった
- 歩くと腰痛が強くなった
など、運動前より明らかに身体が動きにくくなっている場合も内容を見直します。
翌日まで明らかな悪化が続いていないか
多少の筋肉疲労と、いつもの腰痛が明らかに悪化している状態は分けて考えます。
運動後から翌日まで症状が強く残る状態を何度も繰り返しているのであれば、
「続ければ慣れる」
と考えるのではなく、今の運動が身体に合っているかを見直してください。
具体的なNG動作については、ピラティスで腰痛が悪化するNG動作4つ|痛みを増やさない判断基準でも詳しく解説しています。
自宅でうまくできないならマシンを使う方法もある
「自宅でやると、どうしても腰に力が入る」
「正しくできているのか分からない」
という場合があります。
これは、頑張りが足りないという話ではありません。
マット上では、自分の身体を自分で支えながら動く必要があります。
一方、リフォーマーなどを使うマシンピラティスでは、バネによる補助を利用して負荷や可動域を調整できます。
そのため、自宅では腰を反ってしまう動きでも、補助を使うことで身体の使い方を練習しやすくなることがあります。
マシンピラティスが腰痛に向いている理由と注意点では、マットとの違いも含めて詳しく解説しています。
自宅エクササイズだけでは変わりにくい腰痛もある
自宅で運動を続けていても、同じ腰痛を繰り返すことがあります。
そんなときに、
「もっと腹筋を鍛えよう」
「もっとストレッチしよう」
と運動量だけを増やす前に、一度身体の使い方を確認する必要があります。
たとえば、
前屈するといつも腰だけが丸くなる。
スクワットすると腰を反って身体を起こす。
歩くときに股関節が動かず腰をひねる。
このような動作が毎日の生活で繰り返されていれば、自宅で10分運動しても、残りの時間で同じ負担を腰へかけ続けることになります。
腰痛改善では、エクササイズだけを見るのではなく、立つ・座る・歩く・しゃがむといった日常動作まで含めて考えることが重要です。
腰痛とピラティスについて全体から整理したい方は、腰痛×ピラティス完全ガイドも参考にしてください。
このような腰痛は自宅で運動する前に医療機関へ
腰痛の中には、自宅エクササイズより先に医療機関で状態を確認した方がよいものがあります。
安静にしていても痛みが軽くならない、症状が次第に悪化する、発熱を伴う、脚にしびれや力の入りにくさがある、排尿に異常がある場合などは、自己判断で運動を続けず、医療機関へ相談してください。
このような症状がある場合は、「どのエクササイズをすればよいか」を探すより、まず原因を確認することが優先です。
腰痛の自宅ピラティスで大切なのは、種目より自分の動きを見ること
自宅で行うピラティスは、慢性的な腰痛がある人が身体を動かすきっかけの一つになります。
ただし、
「ドローインをすれば腰痛が治る」
「ブリッジをすれば腰が強くなる」
というように、一つの運動ですべてを解決しようとする必要はありません。
今回紹介した運動でも確認したいのは、
呼吸しながら身体を支えられるか。
腰を反らずに股関節を使えるか。
身体を曲げるときに腰だけへ負担を集中させていないか。
という実際の身体の使い方です。
Healthcare Studio ileでは、腰痛がある場所だけを見るのではなく、前屈・スクワット・片脚立ち・歩行など実際の動作を確認し、背骨・骨盤・股関節など身体全体がどのように動いているかを評価します。
そのうえで、ピラティスやトレーニングを「身体の使い方を変えるための手段」として取り入れています。
名古屋・栄・矢場町周辺で、自宅で運動を続けても腰痛を繰り返していて「自分の場合は何を見直せばいいのか分からない」という方は、名古屋で腰痛改善を目指すマシンピラティスもご覧ください。
自分だけでは動き方を判断しにくい場合は、一度身体の動きを確認してみることから始めてみてください。
参考文献
- Patti A, Thornton JS, Giustino V, et al. Effectiveness of Pilates exercise on low back pain: a systematic review with meta-analysis. Disability and Rehabilitation. 2024;46(16):3535-3548.
- Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, et al. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2021;9:CD009790.
- George SZ, Fritz JM, Silfies SP, et al. Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2021;51(11):CPG1-CPG60.
- World Health Organization. WHO guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain in adults in primary and community care settings. 2023.
- 日本整形外科学会. 「腰痛」症状・病気をしらべる.
著者・監修者プロフィール
著者・監修者:水野豪司
理学療法士/Healthcare Studio ile 代表
腰痛や姿勢などの悩みに対して、痛みのある場所だけを見るのではなく、背骨・胸郭・骨盤・股関節など身体全体のつながりと、立つ・座る・前屈する・しゃがむ・歩くといった実際の動作を確認することを大切にしています。
Healthcare Studio ileでは、一人ひとりの身体を評価したうえで、ピラティスやトレーニングを身体の使い方を変えるための手段として活用し、その人に必要な運動を組み立てています。
