「腰椎椎間板ヘルニアと診断されたけれど、運動しても大丈夫なのだろうか」
「ピラティスが良いと聞いたけれど、動いて悪化しないか不安」
このように感じている方も多いと思います。
結論からいうと、腰椎椎間板ヘルニアと診断された方でも、症状が落ち着き、医療機関から運動を制限されていない段階では、ピラティスを運動の選択肢にできる場合があります。
重要なのは「ヘルニアだからピラティスをする」ことではありません。
現在の痛みやしびれ、筋力、どの動作で症状が変化するのかを確認し、その人に合った負荷と動きを選ぶことです。
腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法については、モーターコントロール運動、体幹安定化運動、Clinical Pilatesなど複数の方法が研究されています。一方で、現時点では「全員にこの運動をすればよい」という一律の方法は確立されていません。
この記事では、腰椎椎間板ヘルニアとピラティスの関係、運動するときに見直したい身体の使い方、注意点について理学療法士の視点から解説します。
腰椎椎間板ヘルニアでもピラティスはできる?
腰椎椎間板ヘルニアと診断されても、すべての運動を避け続ける必要があるわけではありません。
2025年のシステマティックレビューでは、手術を受けていない腰椎椎間板ヘルニア患者を対象とした12件のランダム化比較試験、計880人について運動療法が検討されています。
研究された運動には、体幹安定化運動、モーターコントロール運動、Clinical Pilatesなどが含まれていました。
ただし、運動してよいかどうかは現在の症状によって変わります。
たとえば、
・強い痛みやしびれが続いている
・脚の筋力低下が進んでいる
・日常生活そのものが難しい
という段階では、運動方法を考える前に医療機関で状態を確認することが優先です。
一方、
・症状が落ち着いてきた
・日常生活をある程度送れている
・医療機関から運動を禁止されていない
・身体の使い方を見直したい
という段階では、状態を確認しながら運動を取り入れることを検討できます。
大切なのは、「ヘルニアだから動かない」「ヘルニアだからピラティスをする」という二択ではなく、現在の状態に合った運動を選ぶことです。
腰椎椎間板ヘルニアについて、運動だけでなく保存療法や自然経過まで全体から知りたい方は、腰椎椎間板ヘルニアは運動しても大丈夫?保存療法と運動の考え方も参考にしてください。
腰椎椎間板ヘルニアとは?
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板の組織が後方へ突出し、神経根などを刺激することで症状が現れる疾患です。
代表的には、
・腰痛
・お尻から脚にかけての痛み
・脚のしびれ
・感覚の変化
・脚の力の入りにくさ
などがみられます。
ただし、MRIでヘルニアが確認されたという情報だけで、身体の状態をすべて判断するわけではありません。
画像所見に加えて、痛みやしびれの場所、筋力、感覚、どの動作で症状が変化するのか、日常生活にどの程度影響しているのかを確認することが重要です。
日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会の「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021」でも、画像診断だけでなく症候、臨床診断、治療、自然経過などを含めて評価する構成になっています。
なぜ腰椎椎間板ヘルニアにピラティスが使われるのか
ピラティスそのものが突出した椎間板を元の位置へ戻すわけではありません。
ピラティスを使う目的は、腰へ負担を集中させている身体の使い方を見直し、その人に必要な動きを練習することです。
体幹で身体を支えながら動く練習ができる
「ヘルニアだから腹筋を鍛える」と考える人もいますが、重要なのは腹筋の強さだけではありません。
たとえば仰向けで脚を動かすたびに腰が大きく反る人は、腹筋運動の回数を増やす前に、体幹を支えた状態で股関節を動かす練習が必要です。
ピラティスでは、呼吸や骨盤・胸郭の位置を確認しながら、体幹を支えて手足を動かす練習を行えます。
目標は「腹筋を強くすること」だけではなく、日常動作で腰ばかりに仕事をさせないことです。
股関節を使って動く練習ができる
前屈や物を持ち上げる動作では、腰だけではなく股関節も一緒に動きます。
ところが股関節を十分に使えず、床の物を取るたびに腰だけを大きく丸めている人もいます。
その状態では、一日の中で何度も同じ場所へ負担が集中します。
ピラティスでは、骨盤と股関節の動きを確認しながら、腰だけに頼らず身体を動かす練習ができます。
胸郭・骨盤・股関節まで含めて身体を見直せる
腰への負担を考えるとき、腰だけを見ればよいとは限りません。
たとえば胸郭が動きにくい人が身体を起こそうとすると、その動きを腰の反りで補うことがあります。
歩くときに股関節が十分に伸びなければ、腰を反らせたりひねったりして前へ進むこともあります。
そのため、腰椎椎間板ヘルニアの運動を考えるときにも、
「腰の筋肉が硬い」
「腹筋が弱い」
だけで終わらず、身体全体がどう動いているかを見ることが重要です。
腰椎椎間板ヘルニアでピラティスをするときの注意点
強い痛みを我慢して続けない
「運動した方がいい」と聞いたからといって、強い痛みを我慢して続ける必要はありません。
運動を繰り返すほど脚の痛みやしびれが強くなる場合や、運動後に明らかに症状が悪化する場合は、負荷や運動内容を見直します。
問題なのは「痛みに弱いから休む」ということではなく、現在の身体に合わない刺激を繰り返さないことです。
自己流で腹筋運動を繰り返さない
腰椎椎間板ヘルニアと診断されると、「体幹を鍛えなければ」と腹筋運動を始める方もいます。
しかし、勢いをつけて上体を起こしたり、腰を反らせながら脚を動かしたりすれば、本来練習したい身体の使い方とは違う動作を繰り返すことになります。
どの種目を行うかより、その種目を自分がどう行っているかを見ることが重要です。
痛みを我慢してストレッチしない
「硬いから伸ばせば良くなる」と考えて、脚のしびれや痛みを我慢しながらストレッチを続けるのも避けたいところです。
腰椎椎間板ヘルニアでは神経症状を伴うことがあります。
筋肉を伸ばしている感覚と、神経症状を悪化させている状態を自己判断で区別するのが難しいこともあります。
痛みやしびれが強くなる場合は無理に可動域を広げず、一度運動内容を見直してください。
腰痛があるときに注意したい具体的な動きについては、ピラティスで腰痛が悪化するNG動作4つと判断基準で詳しく解説しています。
腰椎椎間板ヘルニアでは「何をするか」より評価が重要
同じ腰椎椎間板ヘルニアでも、身体の状態は一人ひとり違います。
前屈すると脚がしびれる人。
長時間座っているとつらくなる人。
立っていると腰が痛くなる人。
歩いていると症状が変化する人。
こうした違いがあるのに、全員が同じ「ヘルニア用エクササイズ」を行う必要はありません。
実際の動作で、
・股関節を使えているか
・骨盤を支えられているか
・胸郭が動いているか
・腰だけで動きを作っていないか
・左右どちらかへ負担が偏っていないか
を確認することで、その人が見直したいポイントが分かってきます。
ピラティスは、その問題を見つけること自体が目的ではありません。
評価によって見つかった身体の課題を練習するための手段として使います。
柏・つくば・神戸エリアでピラティスを探している方へ
Healthcare Studio ileは名古屋・栄・矢場町エリアのスタジオのため、遠方の方が通うことは現実的ではありません。
柏・つくば・神戸エリアでマシンピラティスを探している方は、Nピラティスの腰椎椎間板ヘルニアに関する解説も参考にしてください。
Nピラティスは、理学療法士監修のもと姿勢や動きを確認しながら、マンツーマンでマシンピラティスを提供しているスタジオです。
お住まいの地域に合わせて、身体の状態を確認してもらえる施設を選ぶことをおすすめします。
このような症状がある場合はピラティスより受診を優先する
腰椎椎間板ヘルニアでは、神経症状が進行している場合があります。
次のような症状がある場合は、自己判断でピラティスを続けず、医療機関での評価を優先してください。
・排尿・排便に異常がある
・脚の筋力低下が進んでいる
・歩きにくさが急速に悪化している
・しびれや脚の痛みが急激に強くなっている
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインでも、緊急手術の適応や、膀胱直腸障害を伴う重度神経障害について独立して検討されています。
「ピラティスをしていいか」を考える前に、まず医療的な対応が必要な状態ではないことを確認することが重要です。
腰椎椎間板ヘルニアを繰り返すなら、腰だけでなく動作を見る
腰椎椎間板ヘルニアに対して運動を行うときに大切なのは、単に体幹を鍛えることではありません。
なぜ前屈すると腰へ負担が集中するのか。
なぜスクワットすると腰を反ってしまうのか。
なぜ座っていると症状が強くなるのか。
こうした実際の身体の使い方を確認し、その人が見直すべき動きを整理することが重要です。
Healthcare Studio ileでは、医療機関で診断・治療を受けたうえで運動が可能な方に対し、痛みのある腰だけを見るのではなく、背骨・胸郭・骨盤・股関節など身体全体のつながりを確認します。
さらに、前屈・スクワット・片脚立ち・歩行など実際の動作を見ながら、どこに負担が集中しているのかを一人ひとり評価します。
そのうえで、ピラティスやトレーニングを身体の使い方を変えるための手段として活用します。
腰椎椎間板ヘルニアに限らず、腰痛とピラティスについて全体から整理したい方は、腰痛×ピラティス完全ガイドも参考にしてください。
名古屋・栄・矢場町周辺で腰痛を繰り返していて、「自分の場合はどこに負担がかかっているのか分からない」という方は、名古屋で腰痛改善を目指すマシンピラティスもご覧ください。
自分だけでは運動してよい状態なのか判断しにくい場合は、まず医療機関で必要な診断・治療を受けたうえで、一度身体の動きを確認してみてください。
参考文献
- Arslan S, Ülger Ö. The effect of exercise in the treatment of lumbar disc herniation: a systematic review. Acta Neurologica Belgica. 2025;125(5):1209-1224. 手術を受けていない腰椎椎間板ヘルニア患者880人を含む12件のRCTを対象に、体幹安定化運動、モーターコントロール運動、Clinical Pilatesなどを検討しています。
- 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会. 『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版』. 南江堂, 2021. 自然経過、診断、保存的治療、緊急手術の適応、膀胱直腸障害を伴う重度神経障害などについてまとめた最新版の国内診療ガイドラインです。
著者・監修者プロフィール
著者・監修者:水野豪司
理学療法士/Healthcare Studio ile 代表
腰痛や姿勢などの悩みに対して、痛みのある場所だけを見るのではなく、背骨・胸郭・骨盤・股関節など身体全体のつながりと、立つ・座る・前屈する・しゃがむ・歩くといった実際の動作を確認することを大切にしています。
Healthcare Studio ileでは、一人ひとりの身体を評価したうえで、ピラティスやトレーニングを身体の使い方を変えるための手段として活用し、その人に必要な運動を組み立てています。
