「ストレッチをしているのに、すぐ猫背に戻る」
「姿勢を意識しても長く続かない」
「整体やマッサージでは変わらなかった」
そんな“猫背が治らない人”には、
いくつか共通する身体の特徴があります。
猫背は、単に背中が丸い状態ではありません。
実際の臨床では、筋肉・関節・感覚の問題が重なって起きているケースがほとんどです。
この記事では、理学療法士の視点から
猫背が治らない人に共通する本当の原因と、
根本改善の考え方をわかりやすく解説します。
CONTENTS
猫背が治らないのは「意識」や「努力」が足りないからではない
まず大前提としてお伝えしたいのは、
猫背は“気をつければ治る姿勢”ではないということ。
姿勢は、
- 脳
- 感覚
- 筋肉
- バランス
これらが無意識に統合された結果として作られています。
つまり、
体が「その姿勢が一番ラクで安全」だと判断している状態が、猫背なのです。
猫背が治らない人①|小胸筋が硬く、肩甲骨が前傾している
臨床で猫背の方を評価すると、
ほぼ例外なく小胸筋の強い短縮が見られます。
小胸筋が硬くなると、
- 肩甲骨が前傾する
- 肩甲骨が肋骨に貼りつく
- 胸が閉じる
という状態になり、
肩甲骨を後傾させること自体ができなくなります。
この状態では、
- 背筋を伸ばそうとしても
- 胸を張ろうとしても
肩甲骨が物理的に動かないため、
猫背の改善はほぼ不可能です。
猫背が治らない人②|僧帽筋下部繊維が使えない
小胸筋の硬さとセットで多いのが、
僧帽筋下部繊維の機能低下です。
僧帽筋下部は、
- 肩甲骨を後傾・下制
- 良い姿勢を「保持」する
ために欠かせない筋肉。
ここが使えないと、
- 一瞬姿勢を正せても
- すぐ戻る
- 首や肩に力が入る
という状態になります。
猫背が治らない人ほど、
「良い姿勢を保つ筋肉」が存在していないのです。
猫背が治らない人③|腹部の安定性が低く、前鋸筋が働かない
肩甲骨の安定は、
実は肩周りだけの問題ではありません。
重要なのが、
- 腹部の安定性
- 前鋸筋の機能
です。
腹部(特に腹横筋)が不安定になると、
前鋸筋がうまく働かず、肩甲骨は宙に浮いた状態になります。
その結果、
- 肩が前に流れる
- 背中が丸まる
- 上半身が不安定になる
つまり、
体幹が不安定 → 肩甲骨が不安定 → 猫背が固定化
という流れが起こります。
猫背が治らない人④|脊柱が圧縮され、身体イメージが崩れている
筋肉や関節を整えても改善しないケースで、
次に重要になるのが身体イメージです。
猫背が強い人ほど、
- 背骨が潰れた感覚
- 身長が低くなったような感覚
- 伸び上がる感覚(エロンゲーション)が分からない
という特徴があります。
これは、
「良い姿勢の自分」を脳がイメージできていない状態
です。
姿勢は、
「どこまでが自分の体か」を脳が把握していないと整いません。
そのため、
- 背骨を長くする感覚
- 頭が上に引き上がる感覚
を再学習しない限り、
姿勢は無意識レベルで元に戻ってしまいます。
猫背が治らない人⑤|眼球運動がうまく使えていない
意外に見落とされがちですが、
眼球運動と姿勢は密接に関係しています。
目線を動かす力が低下すると、
- 頭ごと動かして視線を合わせる
- 頭が前に突き出る
- 首・肩が緊張する
という代償が起こります。
結果として、
「見るために頭を前に出す姿勢」=猫背
が強化されてしまうのです。
猫背が治らない人⑥|前庭機能(バランス感覚)が低下している
さらに重要なのが、前庭機能です。
前庭機能とは、
- 頭の傾き
- 加速・減速
- バランス
を感知する、姿勢制御の中枢的な感覚。
ここが低下すると、体は不安定さを感じ、
- 重心を下げる
- 動きを小さくする
- 視界を固定する
という反応を取ります。
その結果、
- 背中が丸まる
- 頭が前に出る
- 肩がすくむ
つまり猫背は、
バランスを失った体が選んだ「最も安全な姿勢」
でもあるのです。
では、猫背を根本から整えるには何が必要なのでしょうか。
実は、猫背改善には「姿勢を意識する」だけでは不十分で、
骨盤・背骨・呼吸・体幹を正しい順番で整えることが重要です。
▶ 猫背を根本から整えるために必要な考え方と具体的なアプローチは(猫背の原因と正しい改善方法)
猫背改善に必要なのは「部分」ではなく「統合」
ここまでを整理すると、
猫背が治らない人には次の共通点があります。
- 小胸筋が硬い
- 僧帽筋下部が使えない
- 腹部・前鋸筋が不安定
- 身体イメージが崩れている
- 眼球運動が弱い
- 前庭機能が低下している
これらはすべて連動しています。
だからこそ、
- 背中だけ
- 肩だけ
- ストレッチだけ
では改善しません。
ピラティスが猫背改善に向いている理由
ピラティスでは、
- 肩甲骨
- 体幹
- 呼吸
- バランス
- 感覚入力
を同時に再教育できます。
特にマシンピラティスは、
- 肩甲骨を正しい位置へガイド
- 不安定すぎない前庭刺激
- 安全な姿勢での再学習
が可能なため、
猫背が長年治らなかった人ほど変化が出やすいのが特徴です。
まとめ|猫背は「感覚と動き」を整えることで初めて変わる
猫背が治らないのは、あなたの努力が足りないからではありません。
体の使い方や整える順番を、まだ知らなかっただけです。
もし、
・自分の猫背タイプを知りたい
・どこから整えればいいか分からない
・姿勢を本気で変えたい
そう感じた方は、
こちらの記事も参考にしてみてください。
