首が前に出ている。肩の上が盛り上がって見える。横から写真を撮ると、首だけでなく背中まで丸く見える。
このような姿勢を見ると、「ストレートネックだから首を伸ばさなければ」と考える人は少なくありません。
しかし、顎を引いたり首を後ろへ動かしたりしても、すぐに元へ戻ってしまうことがあります。
その理由は、頭が前へ出た姿勢が、首だけでつくられているとは限らないからです。
特にデスクワークやスマートフォンを使う時間が長く、背中が丸まった状態から頭が前へ出ている人は、首より先に胸椎や肋骨の動きを見直す必要があります。
ストレートネックの背景には胸椎の硬さがある
胸椎とは、首と腰の間にある背骨のことです。
背中の中央に位置し、本来は緩やかに丸みを持ちながら、伸びる、ひねる、横へ傾くといった動きをします。
ところが、パソコンやスマートフォンを見る時間が長くなると、胸椎が丸まった姿勢で固まりやすくなります。
背中が丸くなると、胸郭と呼ばれる肋骨全体も後ろへ傾きます。その上に乗っている頭は、身体より前へ押し出されます。
そのままでは視線が下を向いてしまうため、身体は前を見るために顎を上げ、首の上側を反らします。
つまり、横から見たときに首がまっすぐに見える姿勢は、首だけの問題ではありません。
丸くなった背中の上で、目線を正面に保とうとした結果として、頭が前へ出ていることがあるのです。
実際に、胸椎の丸まり、頭部前方位、肩が前へ出た姿勢には関連が報告されています。ただし、すべてが同じ原因で起こるわけではないため、姿勢の形だけでなく、胸椎が実際に動くかどうかを確認することが重要です。
なぜ首だけを整えてもストレートネックが戻るのか
首は前を向くために頑張っている
頭が前へ出ると、首の後ろから肩につながる筋肉は、頭が落ちないように働き続けます。
首の後ろを触ると硬く張っているのは、単に筋肉が縮んでいるからではありません。前へ移動した頭を支えるため、筋肉が休めなくなっている場合があります。
頭が前へ出た姿勢では、頸部の筋肉に求められる活動量が増えることも報告されています。
この状態で首や肩を揉めば、一時的に軽くなることはあります。
しかし、背中が丸く、頭が前へ押し出される姿勢が変わらなければ、首の筋肉は再び頭を支えなければなりません。
首を揉んでも肩こりが繰り返す人は、筋肉の硬さだけでなく、なぜその筋肉が働き続けているのかを考える必要があります。
顎を引くだけでは背中の丸まりは変わらない
ストレートネックの対策として、顎を後ろへ引く運動が紹介されることがあります。
顎を軽く引き、首をコントロールすること自体は必要です。しかし、胸椎が丸まったまま顎だけを強く引くと、頭を身体の上へ戻すのではなく、顎を喉へ押し込む動きになってしまいます。
すると、首の前側が詰まる、息苦しい、後頭部に力が入るといった状態が起こります。
顎を引いたときに首が苦しくなる人は、「顎の引き方が足りない」のではなく、頭を戻すための土台が整っていないのかもしれません。
胸を張ってもストレートネックは改善しない
背中が丸いと言われると、胸を大きく張り、肩甲骨を後ろへ寄せようとする人もいます。
しかし、腰を反って胸だけを前へ突き出しても、胸椎が動いたとは限りません。
一見姿勢が良くなったように見えても、腰や首に力を入れて形をつくっているだけでは、長時間その姿勢を保てません。力を抜けば、すぐに元へ戻ります。
良い姿勢とは、胸を張り続ける姿勢ではありません。
無理な力みが少なく、頭、胸郭、骨盤が重力に対して支えやすい位置にあり、呼吸や身体の動きに合わせて姿勢を変えられる状態です。
「姿勢を良くしよう」と頑張るほど首や腰が疲れる人は、正しい姿勢をつくっているのではなく、身体を固めて良く見せようとしている可能性があります。
本当に見直すべきなのは胸椎・肋骨・骨盤
ストレートネックを改善したい場合、首だけでなく、少なくとも次の部分を確認する必要があります。
胸椎が伸びてひねれるか
胸椎が丸まった位置から伸びられなければ、頭を身体の上へ戻すためのスペースがつくれません。
また、胸椎は伸びるだけでなく、歩く、振り向く、腕を上げるときにひねられます。
胸椎の回旋が少ない人は、首だけを大きくひねったり、肩をすくめたりして動きを補いやすくなります。
姿勢を静止画だけで判断せず、身体をひねったときや腕を上げたときに、首がどのように動いているかまで確認することが大切です。
呼吸に合わせて肋骨が動くか
胸椎の周囲には肋骨がついています。
呼吸をすると、肋骨は前だけでなく、横や後ろにも広がります。
肋骨が動かず、胸や肩を持ち上げるように息を吸っていると、首から肩につながる筋肉が呼吸を助けるために働きやすくなります。
首や肩の緊張が強い人ほど、姿勢だけでなく、息を吸ったときに肩が上がっていないか、背中側まで空気が入っている感覚があるかを確認する必要があります。
骨盤の上に胸郭が乗っているか
背中だけを伸ばそうとしても、骨盤が前へ移動し、胸郭が後ろへ倒れた姿勢では、頭を身体の上へ戻しにくくなります。
このような姿勢では、胸椎を伸ばす代わりに腰を反り、頭だけを後ろへ引く動きが起こりやすくなります。
ストレートネックは上半身だけの問題に見えますが、立ったときの足の位置や骨盤、胸郭の位置までつながっています。
自分で確認できるストレートネックのサイン
次の方法は診断ではありませんが、自分の姿勢を確認する目安になります。
壁にかかと、お尻、背中をつけ、普段どおりの力加減で立ってみてください。
このとき、無理なく後頭部が壁につくかを確認します。
後頭部をつけようとすると、
・顎が大きく上がる
・顎を強く引かなければつかない
・腰を反らなければ苦しい
・肩や首に力が入る
・息を止めたくなる
といった反応が出る場合は、首だけでなく胸椎や胸郭、骨盤の位置も見直す必要があります。
横から撮った写真も参考になります。
耳が肩より大きく前にあるかだけでなく、背中が丸くなっていないか、胸郭が骨盤より後ろへ倒れていないか、顎を上げて前を向いていないかまで確認しましょう。
大切なのは、後頭部を無理に壁へ押しつけることではありません。
どこに力を入れなければ頭を戻せないのかを確認することです。
日常生活では首より先に「背中が丸まる時間」を減らす
ストレートネックを改善するために、常に背筋を伸ばし続ける必要はありません。
同じ姿勢を長く続けないことのほうが重要です。
パソコン作業では、画面が低すぎると頭が前へ出やすくなります。スマートフォンも膝の上で見るのではなく、腕や肘を支えながら、画面を少し高い位置へ近づけましょう。
また、座るたびに胸を張るのではなく、定期的に立つ、歩く、身体をひねる、腕を上げるなど、胸椎をさまざまな方向へ動かすことも必要です。
ストレートネックは、一度のストレッチで起きたものではありません。
毎日の仕事やスマートフォン、座り方の中で、頭を前へ出す動きを繰り返した結果として定着しているケースがあります。
運動だけでなく、普段どのように身体を使っているかまで見直さなければ、姿勢は戻りやすくなります。
首の痛みやしびれがある場合は医療機関へ
ストレートネックのように見える姿勢があっても、すべての首の痛みを姿勢だけで説明できるわけではありません。
次のような症状がある場合は、セルフケアだけで判断せず、医療機関へ相談してください。
・腕や手に強いしびれ、力の入りにくさがある
・転倒や事故のあとから首が痛む
・発熱や強い倦怠感を伴う
・突然の激しい頭痛やめまいがある
・歩きにくさや細かい手作業のしにくさがある
・安静にしていても強く痛む
特に神経症状がある場合は、姿勢改善よりも先に、適切な検査と診断が必要です。
ストレートネックは首だけを見ないことが大切
ストレートネックを改善したいからといって、首だけを伸ばしたり、顎を引いたりしても、根本的な姿勢は変わらないことがあります。
背中が丸まり、肋骨が動かず、骨盤の上に胸郭が乗っていなければ、頭は再び前へ押し出されます。
見直すべきなのは、首の形だけではありません。
胸椎が動くか。呼吸に合わせて肋骨が広がるか。立つ、座る、歩くときに、頭と胸郭を骨盤の上で支えられているか。
Healthcare Studio ileでは、静止した姿勢だけでなく、呼吸、背骨の動き、腕を上げる動作、歩き方まで確認します。
ピラティスやトレーニングは、決められた運動を行うことが目的ではありません。一人ひとり異なる身体の使い方を確認し、必要な動きを取り戻すための手段です。
名古屋・栄・矢場町周辺で、ストレートネックや肩の盛り上がり、繰り返す首こりに悩んでいる方は、首を揉み続ける前に、一度背中や呼吸を含めた全身の動きを確認してみてください。
参考文献
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著者・監修者プロフィール
著者・監修者:水野豪司
理学療法士・ピラティスインストラクター。Healthcare Studio ile代表。
首や肩など、症状が出ている部分だけを整えるのではなく、背骨、胸郭、骨盤、足部の位置や、呼吸、歩行、腕を上げる動作などを含めて身体全体を確認しています。
姿勢の見た目を一時的に整えることではなく、「なぜその姿勢になっているのか」を考え、一人ひとりの身体に合わせたピラティスやトレーニングを通して、動きやすく不調を繰り返しにくい身体づくりをサポートしています。
