朝起きた瞬間から首が痛い。左右を向こうとしても動かしにくく、首の付け根が固まったように重い。
このような症状があると、多くの人は最初に「枕が合っていないのかな」と考えます。
しかし、起きて動き始めると少し楽になるのに、翌朝になるとまた首が痛む人は、枕だけでなく、日中のストレートネックによって首へ負担がかかり続けている状態を見直す必要があります。
特に、デスクワークやスマートフォンを使った日の夜に首が重くなり、朝に首の付け根がこわばる人は、寝ている時間だけの問題ではありません。
日中に頭をどの位置で支えているかが、朝の首痛にもつながっています。
朝の首痛は「枕だけ」が原因ではありません
朝に首が痛いと、寝違えや枕の高さばかりが気になります。
もちろん、枕の高さや硬さ、寝る姿勢は首の状態に影響します。実際に、睡眠中に首や背骨へ負担がかかる姿勢が長く続く人ほど、起床時の痛みや睡眠の質の低下がみられた研究もあります。
ただし、睡眠中の姿勢は、日中の身体の状態と切り離して考えられません。
背中が丸まり、頭が肩より前へ出た状態で一日を過ごしている人は、横になった瞬間に首が自然な位置へ戻るわけではないからです。
胸椎や肋骨が動きにくくなり、首まわりの筋肉が緊張した状態で眠れば、朝に首の痛みやこわばりを感じやすくなります。
ストレートネックで首が休みにくくなる仕組み
一般的に「ストレートネック」と呼ばれる状態には、首のカーブが少なく見える状態だけでなく、横から見たときに頭が肩より前へ出ている姿勢も含まれます。
この記事では、日常的に使われている言葉に合わせ、頭が身体より前へ出た姿勢も含めてストレートネックと表現します。
成人を対象とした研究では、首の痛みがある人ほど頭が前へ出た姿勢がみられる傾向や、姿勢と痛みの強さ・生活上の不便さとの関連が報告されています。姿勢だけですべての首痛を説明できるわけではありませんが、デスクワーク後や起床時に首の付け根が痛む人では、確認する必要がある要素です。
頭が前に出ると首の後ろが働き続ける
頭には重さがあります。
頭が背骨の上に乗っていれば、その重さを骨格で支えやすくなります。しかし、頭が身体より前へ移動すると、そのままでは頭が前へ倒れてしまいます。
そこで、首の後ろや肩につながる筋肉が、頭を後ろから引き止め続けます。
デスクワーク中に頭が画面へ近づいている人や、スマートフォンを見るときに首を前へ突き出している人は、首の後ろが休みにくい状態を一日の中で何時間も繰り返しています。
さらに、頭が前に出たまま正面を見るには、首の上側を反らす必要があります。
その結果、後頭部のすぐ下にある小さな筋肉は縮み、首の付け根には圧迫感や重だるさが生じやすくなります。
この状態のまま眠ると、朝になっても首の付け根が固まったように感じるのです。
背中が丸いままでは頭だけを後ろへ戻せない
ストレートネックを改善しようとして、顎だけを強く引いている人も少なくありません。
しかし、背中が丸く、胸郭が後ろへ沈んだままでは、頭だけを真っすぐに戻すことはできません。
無理に顎を引くと、首の前側に力が入り、下を向いたような苦しい姿勢になります。見た目では頭が後ろへ移動していても、首全体が楽になっているとは限りません。
頭を背骨の上に乗せるためには、首だけでなく、胸椎が自然に起きること、肋骨が呼吸に合わせて動くこと、肩甲骨が胸郭の上で安定することが必要です。
高い枕が必要になる身体の状態を考える
「高い枕は首に悪い」と聞いたことがある人もいるかもしれません。
しかし、高い枕がすべての人に悪いわけではありません。大切なのは、その高さが自分の身体や寝る姿勢に合っているかどうかです。
背中が丸くなり、後頭部が身体より前へ出ている人が仰向けになると、枕なしでは頭が後ろへ落ちるように感じたり、顎が上がったりすることがあります。
その状態が苦しいため、高い枕を使って頭の後ろを埋めている人もいます。
つまり、高い枕を使っているからストレートネックになるだけではなく、ストレートネックや胸椎の丸まりがあるため、高い枕が必要になっている場合もあるのです。
ただし、必要以上に高い枕を使えば、頭が前へ押し出され、首を曲げた状態が長時間続きます。日中も睡眠中も同じように頭が前へ出れば、首の後ろが休みにくくなります。
枕の研究では、枕によって起床時の痛みが軽減する可能性が報告されています。一方、近年のシステマティックレビューでは、低反発、ラテックス、一般的な枕など、特定の種類が明確に優れているとは結論づけられていません。
「首に良いと評判の枕」を選ぶことよりも、自分の身体と寝る姿勢に合う高さを考える必要があります。
横向きでは肩幅と枕の高さが合っているかを確認する
横向きで眠る場合は、肩の厚みがあるため、仰向けよりも枕の高さが必要になります。
枕が低すぎれば頭がベッド側へ傾き、高すぎれば反対側へ傾きます。どちらの場合も、首を左右へ曲げた状態が長く続きます。
横向きになったときは、後頭部から背中までが大きく折れ曲がらず、顔の中心が胸の中心とおおよそ同じ方向を向いているかを確認してみてください。
ただし、寝始めた姿勢だけを整えても、身体が硬くて寝返りが少なかったり、毎回同じ方向だけを向いたりしていれば、一部分へ負担が集中します。
Healthcare Studio ileでは、枕の高さだけでなく、無理なく寝返りができるか、身体をひねったときに胸椎や骨盤が動くかまで確認します。
朝の首痛とストレートネックの関係を確認するポイント
次のような特徴が複数当てはまる場合は、枕だけでなく日中のストレートネックを見直す必要があります。
・朝は首の付け根が痛いが、動き始めると少し軽くなる
・夕方やデスクワーク後にも首が重くなる
・横から見ると耳が肩より前にある
・正面を見るときに顎が上がりやすい
・首の付け根や肩が盛り上がって見える
・深呼吸をすると肋骨より先に肩が上がる
・仰向けで低い枕を使うと顎が上がる
・枕を買い替えた直後は楽でも、再び朝の首痛が戻る
これはストレートネックを診断するためのチェックではありません。
しかし、枕だけでは変わらない理由を探す手がかりになります。
朝の首痛では首以外も見直す必要があります
朝の首痛を改善するために、首を強く伸ばしたり、顎を引いたまま眠ったりする必要はありません。
首を伸ばすと一時的に気持ちよく感じることはありますが、日中の姿勢や身体の使い方が変わらなければ、同じ場所に再び負担がかかります。
見直したいのは、次のような部分です。
胸椎が動いているか
背中が丸まったままでは、首だけで正面を向かなければなりません。
胸椎を反らす動きだけでなく、左右へ回す動きが出ることも、首の負担を分散させるために大切です。
肋骨が呼吸に合わせて広がるか
呼吸をするたびに肩が大きく上がる人は、首まわりの筋肉を呼吸にも使っていることがあります。
肋骨が前後左右へ広がれば、肩や首を過剰に持ち上げなくても呼吸しやすくなります。
肩甲骨を無理に寄せていないか
姿勢を良くしようとして肩甲骨を強く寄せ続けると、胸を張りすぎたり、首や腰に力が入ったりします。
肩甲骨は固定するのではなく、腕の動きや呼吸に合わせて胸郭の上を動く必要があります。
頭を支える筋力と持久力があるか
姿勢は一瞬だけ整えられればよいわけではありません。
仕事や家事を続けても頭を背骨の上で支えられるように、首や肩まわりの筋肉が無理なく働き続けられる状態を作る必要があります。
首痛に対する臨床ガイドラインでも、首の運動だけではなく、肩甲帯や上半身の筋力・持久力、胸椎へのアプローチを組み合わせることが推奨されています。
また、頭が前へ出た姿勢に対する運動は、姿勢の変化と首痛の軽減に役立つことが報告されています。ただし、全員が同じ運動を行うのではなく、どの部分が動かず、どこが代わりに頑張っているのかを確認することが大切です。
医療機関への受診を優先したい首の痛み
朝の首痛の多くは筋肉や関節の負担と関係しますが、次の症状がある場合は、姿勢改善や運動より先に医療機関へ相談してください。
・転倒や事故のあとから強い首痛が出た
・腕や手のしびれ、力の入りにくさがある
・手先が急に使いにくくなった
・歩きにくさやふらつきがある
・発熱や強い頭痛を伴う
・夜間も強い痛みが続き、徐々に悪化している
・首だけでなく両肩や股関節まで強くこわばる
特に、しびれや筋力低下、歩行の変化などは神経の問題が隠れていることがあるため、早めの評価が必要です。
枕を替えても朝の首痛が続く人へ
朝起きたときに首が痛いからといって、すべての原因がストレートネックにあるわけではありません。
ただし、デスクワークやスマートフォンを使う時間が長く、日中から頭が前へ出ている人が、朝になると首の付け根に痛みやこわばりを感じる場合は、枕だけでなく一日の身体の使い方を見直す必要があります。
首だけを揉む。首だけを伸ばす。枕を何度も買い替える。
それでも繰り返すのは、首に負担をかけている胸椎や肋骨、肩甲骨、呼吸、寝返りが変わっていないからかもしれません。
名古屋・栄、矢場町のHealthcare Studio ileでは、首の角度だけでストレートネックを判断しません。
立っている姿勢や座っている姿勢に加えて、胸椎の動き、肋骨の広がり、肩甲骨や骨盤の位置、呼吸、寝返りまで確認し、なぜ首に負担が集中しているのかを考えます。
枕を替えても朝の首痛を繰り返している場合は、一度、寝ている姿勢だけでなく日中の身体の動きから確認してみてください。
参考文献
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著者・監修者プロフィール
水野豪司
理学療法士/Healthcare Studio ile代表
名古屋・栄のHealthcare Studio ileで、姿勢や首こり、肩こり、腰痛などの身体の悩みに対するサポートを行っています。
痛みがある場所だけを見るのではなく、立つ、座る、歩く、呼吸する、寝返りをするといった実際の動作を確認し、胸郭・骨盤・肩甲骨・足部を含めた全身のつながりから原因を考えることを大切にしています。
ピラティスやトレーニングを目的にするのではなく、一人ひとり異なる身体を評価したうえで、負担を繰り返しにくい身体の使い方を身につけるための手段として提供しています。
