首を揉んだ直後は軽くなるのに、仕事やスマートフォンを始めると、また首の付け根が硬くなる。
夕方になると頭を支えることさえつらくなり、首を回すたびに重さや詰まりを感じる。
このような首こりでは、硬くなった筋肉をほぐすだけでなく、ストレートネックによって首の筋肉が休めなくなっている姿勢を見直す必要があります。
特に、デスクワークやスマートフォンの後に首の付け根が重くなる人、揉んでも翌日には戻る人、横から見ると耳が肩より前にある人は、頭の位置が首こりを繰り返す原因になっている可能性があります。
ここでいうストレートネックとは、レントゲン上の首のカーブだけではなく、一般的にストレートネックと呼ばれている「頭が身体より前へ出た姿勢」を含めて説明します。
首こりは「首が硬い」のではなく「首が休めない」
ストレートネックになると、頭が身体より前へ移動します。
頭が前へ出たままでは、その重さによってさらに前へ倒れてしまいます。そのため、首の後ろや首の付け根にある筋肉は、頭が落ちないように引き止め続けなければなりません。
さらに、そのままでは目線が下を向くため、身体は前を見るために首の上側を反らします。
すると、横から見た首は次のような状態になります。
- 首の下側は前へ曲がる
- 首の上側は後ろへ反る
- 顎が前方へ突き出る
- 首の付け根が縮んだ状態になる
首がまっすぐになっているというより、首の場所によって曲がり方が変わり、一部へ負担が集中している状態です。
この姿勢では、座っているときも、歩いているときも、首の筋肉が頭を支え続けます。研究でも、頭が前へ出た姿勢では首まわりの筋活動や負担が変化することが報告されています。
つまり、首こりがあるから首の筋肉が働いているのではありません。
首の筋肉が休めない姿勢になっているから、首が硬くなるのです。
首を揉んでも首こりが戻る理由
首こりがつらいと、首を揉む、ストレッチする、温めるといった対策を行う人が多いと思います。
これらの方法が間違っているわけではありません。筋肉の緊張がやわらぎ、一時的に血流や動かしやすさが変わることで、首が軽く感じられることはあります。
しかし、ほぐした後にパソコンへ向かい、頭が再び前へ出れば、首の筋肉はまた頭を支える仕事を始めます。
マッサージの効果が切れたから首こりが戻るのではありません。
首の筋肉を硬くしている頭の位置や身体の使い方が変わっていないため、同じ場所へ再び負担がかかっているのです。
これは、重い荷物を持ち続けて疲れた腕を一度揉んでも、また同じ荷物を持てば疲れることと似ています。
首こりを繰り返さないためには、硬くなった場所をほぐすだけでなく、首が頭を支え続けなくてもよい状態を作る必要があります。
ストレートネックの原因は首だけではない
ストレートネックが気になると、首を後ろへ引いたり、顎を引いたりして首だけを直そうとしがちです。
しかし、頭が前へ出る背景には、首と腰の間にある胸椎の動きが関係しています。
胸椎は背中を構成する背骨です。本来は丸みを持ちながら、伸びる、ひねる、左右へ曲がるといった動きをします。
デスクワークなどで胸椎が丸まった状態が続くと、その上に乗っている頭も前へ押し出されます。
そのままでは視線が下がるため、前を見るために首の上側を反らし、顎を前へ突き出します。こうして、丸くなった背中の上で首だけが無理に前を向く姿勢が作られます。
首の痛みがある人では胸椎の動きが低下している傾向が報告されており、胸椎の丸まりと頭部前方位にも関連が認められています。胸椎の丸み自体がすべての首こりを起こすわけではありませんが、胸椎が動かない状態では、首が動きを補わなければならなくなります。
首を動かしているつもりでも、実際には動きにくい背中の代わりに、首の一部だけを繰り返し動かしている人も少なくありません。
首こりを改善するには胸椎と肋骨も見直す
首こりがあるときに背中まで確認する理由は、単に姿勢の見た目を整えるためではありません。
胸椎が伸びたりひねったりできるようになると、頭を骨盤の上へ戻しやすくなり、首だけで前を見る必要がなくなるからです。
頭が前へ出た姿勢の人を対象にした研究では、首を中心とした介入よりも、胸椎の動きへの介入を行ったグループで、短期的な頭の位置、首の動き、痛み、日常生活上の支障がより改善したと報告されています。小規模な研究で長期的な効果は分かっていませんが、首だけでなく胸椎を確認する必要性を示す結果です。
大切なのは、胸を強く張ることではありません。
胸を張ろうとして腰を反らせると、背中が動いたように見えても、実際には腰で姿勢を作っているだけの場合があります。
必要なのは、骨盤の上で胸郭が動き、肋骨の後ろや横にも呼吸が入ることです。
呼吸のたびに首を使っていませんか
首こりが繰り返す人では、呼吸も確認する必要があります。
呼吸では、本来、横隔膜が働き、肋骨が前後左右へ広がります。
ところが、背中が丸まり、肋骨が動きにくくなると、胸郭だけでは十分に息を吸いにくくなります。そこで身体は、首から肋骨につながる筋肉や肩を持ち上げる筋肉を使って、胸を上方向へ引き上げようとします。
深呼吸をしたときに肩が上がる人や、首の前側に筋が浮き出る人は、首の筋肉を呼吸の補助に使っている可能性があります。
この状態では、首の筋肉は頭を支えるだけでなく、呼吸のたびにも働かなければなりません。
慢性的な首の痛みがある人では、呼吸筋の力や呼吸機能の低下がみられ、頭が前へ出た姿勢との関連も報告されています。ただし、呼吸の問題だけが首こりを起こすという意味ではありません。首を休ませるためには、頭の位置とともに胸郭や呼吸も確認する必要があるということです。
顎を強く引いてもストレートネックは整わない
頭が前に出ていると、「顎を引いてください」と言われることがあります。
しかし、顎を強く引けばよいわけではありません。
背中が丸いまま頭だけを後ろへ引くと、丸くなった胸椎の上へ頭を無理やり押し戻すことになります。
この姿勢では、次のような反応が起こりやすくなります。
- 喉が詰まる
- 首の前側に力が入る
- 肩が持ち上がる
- 息が吸いにくくなる
- 顎の下が強く縮む
- 数分で姿勢がつらくなる
一瞬だけ耳と肩の位置がそろっても、力を抜いた途端に元へ戻るのであれば、身体がその位置を保てているとはいえません。
まず胸椎や肋骨が動き、胸郭の上に頭を乗せられる状態を作る。そのうえで、首の前側にある深い筋肉を使い、頭の位置を無理なく調整する必要があります。
ストレートネックに対する運動は、頭の位置や首の痛みの改善につながることが報告されています。ただし、首を強く引く一つの運動だけではなく、ストレッチ、筋力、動きのコントロールなどを組み合わせることが重要です。
首こりで本当に見直したい身体の部分
繰り返す首こりでは、首の硬さだけでなく、次の部分を確認します。
胸椎が伸びたりひねったりできるか
背中が丸いことよりも、丸まった状態から動けるかどうかが重要です。
腕を上げたときに腰だけが反る人や、身体をひねったときに首ばかり動く人は、胸椎の動きが不足していることがあります。
肋骨が前後左右へ動いているか
息を吸ったときに胸の上だけが持ち上がり、背中や脇腹が広がらない場合、首の筋肉を使って呼吸している可能性があります。
呼吸を整えるとは、無理に大きく吸うことではありません。息を吐いたときに首や肩の力が抜け、次の息が自然に肋骨へ入る状態を作ることが大切です。
肩甲骨が固定されすぎていないか
「肩甲骨を寄せて姿勢を良くしよう」と力を入れ続けると、かえって首や肩が緊張することがあります。
肩甲骨は寄せた位置で固定するものではなく、腕や胸郭の動きに合わせて動くものです。
骨盤の上に胸郭が乗っているか
椅子に浅く座って骨盤が後ろへ倒れると、胸椎が丸まり、頭は前へ出やすくなります。
反対に、腰を強く反らせて胸を張ると、見た目は起きていても身体全体が力んでしまいます。
骨盤、胸郭、頭が無理なく積み重なる位置を見つける必要があります。
ストレートネックによる首こりのセルフチェック
次の項目を確認してみてください。
横から写真を撮る
普段どおりに立ち、真横から写真を撮ります。
耳の穴が肩の中央より大きく前にある場合は、頭が身体より前へ移動している可能性があります。
撮影の瞬間だけ姿勢を直さず、普段の姿勢を確認することがポイントです。
首を左右へ向く
正面を向いた状態から、ゆっくり左右を振り向きます。
左右差が大きい、首の付け根が詰まる、身体ごと回さないと後ろを見られない場合は、首だけでなく胸椎の回旋も確認する必要があります。
深呼吸をする
椅子へ楽に座り、深呼吸をします。
息を吸うたびに肩が上がる、首の筋が浮き出る、息を吐いても首の力が抜けない場合は、首の筋肉を呼吸に使いすぎている可能性があります。
顎を引いた状態を保つ
顎を軽く後ろへ引いたときに、喉が苦しい、息が止まる、肩に力が入る場合は、首だけを無理に修正しています。
セルフチェックだけでストレートネックや首こりの原因を診断することはできませんが、自分が首をどのように使っているかを知る手がかりになります。
日常で意識したい首こり対策
首こりを改善するために、常に良い姿勢を保とうとする必要はありません。
同じ姿勢を長く続けないことと、首以外の場所も動かすことが重要です。
仕事やスマートフォンの合間には、次の点を意識してみてください。
- 画面を極端に低い位置へ置かない
- 肘や前腕を机などで支える
- 作業の区切りで一度立ち上がる
- 胸を張らず、背中をゆっくり伸ばす
- 身体を左右へひねり、胸椎を動かす
- 息を長く吐き、首と肩の力を抜く
- 顎を強く引かず、小さくうなずくように首を動かす
一度に姿勢を完璧に変えようとすると、別の場所へ力が入りやすくなります。
まずは首がつらくなる前に姿勢を変え、首の筋肉が頭を支え続ける時間を減らすことから始めましょう。
しびれや筋力低下がある場合は医療機関へ
首こりのなかには、筋肉や姿勢だけでは判断できない症状もあります。
次のような場合は、セルフケアや運動を続ける前に医療機関へ相談してください。
- 肩から腕、手にかけて痛みやしびれがある
- 手や腕へ力が入りにくい
- 箸やボタンなど細かな動作が難しくなった
- 首を反らすと腕の症状が強くなる
- 転倒や交通事故の後から痛みが始まった
- 強い頭痛、発熱、めまいなどを伴う
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 症状が徐々に悪化している
腕や手のしびれ、筋力低下、感覚障害は、頚椎の神経根が圧迫または刺激されているときにも生じます。
首こりを繰り返さないために必要なこと
デスクワークやスマートフォンの後に首の付け根が重くなり、揉んでもすぐ戻る首こりでは、ストレートネックによって首の筋肉が休めなくなっている状態を見直す必要があります。
首を揉むことや伸ばすことだけでは、頭を支える負担までは変わりません。
大切なのは、胸椎や肋骨が動き、骨盤の上に胸郭と頭が自然に乗る状態を作ることです。
頭の位置が変われば、首の筋肉は必要以上に頑張らなくて済むようになります。
ただし、同じストレートネックに見えても、胸椎が硬い人、呼吸で首を使っている人、骨盤が後ろへ倒れている人、首自体の動きをコントロールしにくい人では、見直すべき部分が異なります。
名古屋・栄、矢場町にあるHealthcare Studio ileでは、首の硬さだけでなく、胸椎、肋骨、肩甲骨、骨盤、呼吸、立ち方や座り方まで確認します。
ピラティスやトレーニングを行うこと自体が目的ではありません。なぜ首が休めない状態になっているのかを評価し、その人の身体に必要な動きを取り戻すための手段として運動を取り入れます。
首を揉んでもすぐ元へ戻る人や、自分ではどこを直せばよいか分からない人は、一度、首だけでなく全身の動きを確認してみてください。
参考文献
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- 日本整形外科学会.「頚椎症性神経根症」症状・病気をしらべる.
著者・監修者プロフィール
水野豪司|著者・監修者
理学療法士。Healthcare Studio ile代表。
姿勢の崩れや肩こり、首こり、腰痛などの身体の不調に対し、痛みが出ている場所だけで判断するのではなく、胸郭、骨盤、呼吸、立ち方、歩き方など、全身の動きのつながりを確認することを大切にしています。
ピラティスやトレーニングを目的にするのではなく、一人ひとりの身体を評価したうえで、不調を繰り返している原因を考え、身体を変えるための手段として運動を提案しています。
