「腰椎椎間板ヘルニアと診断されたけれど、運動しても大丈夫なのだろうか」
「動いたらヘルニアがさらに悪化するのでは?」
こうした不安を感じて、できるだけ腰を動かさないようにしている方もいると思います。
結論からいうと、腰椎椎間板ヘルニアだからといって、すべての運動を避け続ける必要はありません。
ただし、脚の力が急に入りにくくなっている、排尿・排便に異常があるなど、神経症状が進行している場合は運動より医療機関での評価が優先されます。
一方、医師の診断を受け、症状が落ち着いている段階では、その人の状態に合わせた運動が保存療法の一部として選択されます。近年のシステマティックレビューでも、腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法について、痛みや身体機能などを対象とした研究が複数報告されています。
大切なのは「ヘルニアだから運動する」「ヘルニアだから安静にする」と一律に考えることではありません。
今どのような症状があり、どの動作で症状が変化し、身体をどう使っているのかを確認したうえで運動を選ぶことです。
腰椎椎間板ヘルニアとは?
腰椎椎間板ヘルニアは、腰の背骨の間にある椎間板の組織が後方へ突出し、神経根などを刺激することで症状を起こす疾患です。
代表的には、
- 腰痛
- お尻から脚にかけての痛み
- 脚のしびれ
- 感覚の変化
- 脚の力の入りにくさ
などがみられます。
日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会による「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021」では、自然経過、画像所見、保存的治療、手術の適応などを含めて診療方針が整理されています。
重要なのは、MRIにヘルニアが写っているという情報だけで、現在の身体の状態をすべて判断しないことです。
画像所見だけでなく、痛みやしびれの範囲、筋力、感覚、日常生活への影響などを合わせて評価し、治療方針を決めていきます。
腰椎椎間板ヘルニアは運動しても大丈夫?
運動してよいかどうかは、現在の症状によって変わります。
痛みや神経症状が強い時期は、まず医療機関で状態を確認する
発症直後で強い腰痛や脚の痛みがある場合や、症状が急速に悪化している場合に、無理に運動を始める必要はありません。
特に、筋力低下などの神経症状が進行している場合には、運動方法を考える前に医療機関で状態を確認することが重要です。
「動いた方がいいと聞いたから」と痛みを我慢して運動するのも、「ヘルニアだから」と自己判断で何週間もほとんど動かないのも避けたいところです。
現在どの段階にいるのかを確認して、その状態に合わせて活動量を決めます。
症状が落ち着いた後は、運動を段階的に取り入れる
痛みや神経症状が落ち着き、医療機関から運動を制限されていない場合には、身体の状態に合わせて活動を戻していきます。
2025年のシステマティックレビューでは、腰椎椎間板ヘルニアを対象に、モーターコントロール運動、体幹安定化運動、ピラティスなどを含む12件のランダム化比較試験が検討されています。
現時点では「この運動だけをすれば全員が改善する」と言えるわけではありませんが、運動は保存的な治療の中で検討される重要な選択肢です。
「ヘルニアがある=手術が必要」ではない
腰椎椎間板ヘルニアと診断されると、「このまま手術になるのでは」と不安になる方もいると思います。
しかし、腰椎椎間板ヘルニアの治療には保存的治療と手術的治療があり、すべての人が手術を受けるわけではありません。
診療ガイドラインでも、薬物治療などの保存的治療と手術治療、さらに緊急手術が必要となるケースが分けて検討されています。
つまり、
「MRIにヘルニアが写った」
↓
「必ず手術」
という単純な流れではありません。
症状の程度や神経症状、日常生活への影響、経過などを確認したうえで治療方法が選択されます。
腰椎椎間板ヘルニアは自然に小さくなることがある
腰椎椎間板ヘルニアには、突出した椎間板組織が時間とともに縮小・吸収される「自然退縮」が起こることがあります。
2024年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、保存的に経過をみた腰椎椎間板ヘルニアで、画像上の自然吸収が認められる割合は全体で約70%でした。
特に、脱出型・遊離型では自然吸収が起きる割合が高いことも報告されています。
ただし、これは「70%の人が何もしなくても治る」という意味ではありません。
画像上でヘルニアが小さくなることと、痛み・しびれ・身体機能がどう変化するかは分けて考える必要があります。
また、ヘルニアのタイプによって自然吸収率も異なります。
そのため、「自然に吸収されるらしいから病院へ行かなくていい」と判断するのではなく、症状を確認しながら医師と治療方針を相談することが重要です。
腰椎椎間板ヘルニアの運動で大切なのは「腹筋を鍛えること」だけではない
ヘルニアになると、
「体幹が弱いから腹筋を鍛えた方がいい」
と言われることがあります。
もちろん、身体を支える体幹機能は重要です。
しかし、腹筋を強くすればそれだけで問題が解決するわけではありません。
たとえば床から物を持ち上げるときに、股関節をほとんど使わず腰だけを大きく丸めている。
椅子から立つときに、腰を反らせて身体を起こしている。
歩くときに股関節が動かず、腰を大きくひねって進んでいる。
このような身体の使い方を繰り返している場合、腹筋運動だけを増やしても、日常生活で腰に負担が集中している状態は変わりません。
腰椎椎間板ヘルニアの運動を考えるときにも、痛い腰だけを見るのではなく、
- 背骨
- 骨盤
- 股関節
- 胸郭
- 脚
が実際の動作の中でどう連動しているかを見ることが大切です。
ピラティスをする場合も、ヘルニアの状態に合わせる
腰椎椎間板ヘルニアがある人にとって、ピラティスも運動方法の一つになり得ます。
ただし、「ヘルニアにはピラティスが効く」と一括りに考えるのではなく、どの姿勢・どの負荷・どの動作を選ぶかが重要です。
前屈で脚の症状が強くなる人と、立っていると症状が強くなる人に、まったく同じ運動を行う必要はありません。
また、現在の症状によってはピラティスより医療機関での治療が優先されます。
腰椎椎間板ヘルニアとピラティスについて詳しく知りたい方は、腰椎椎間板ヘルニアにピラティスは有効?運動する際の注意点で、ピラティスに絞って解説しています。
このように役割を分けることで、この記事では「ヘルニアと運動・保存療法の全体像」、リンク先では「ピラティスを行う際の具体的な考え方」を確認できます。
日常生活では「腰を守る」より負担を分散する
腰椎椎間板ヘルニアがあると、腰を動かすこと自体が怖くなり、身体を固めて生活する人もいます。
しかし、本来の日常動作では腰だけでなく、股関節や膝、胸郭など身体全体が連動して動きます。
たとえば床の物を持ち上げるときに、腰だけを動かすのではなく、股関節や膝も使う。
同じ姿勢を長時間続けず、身体を適度に動かす。
こうした「腰だけに仕事を集中させない身体の使い方」を身につけることが重要です。
「正しい姿勢をずっと維持する」ことよりも、身体を一つの姿勢に固めず、その場面に合わせて動けることを目指します。
このような症状がある場合は運動より受診を優先する
腰椎椎間板ヘルニアでは、神経症状の進行を見逃さないことが重要です。
次のような症状がある場合は、自己判断で運動を続けず、速やかに医療機関へ相談してください。
- 排尿・排便に異常がある
- 会陰部周辺に感覚の異常がある
- 脚の力が急に入りにくくなった、または筋力低下が進んでいる
- 歩きにくさが急速に悪化している
- 強い痛みやしびれが急激に悪化している
腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインでは、緊急手術の適応や膀胱直腸障害を伴う重度神経障害についても独立した項目として扱われています。
「ピラティスをして大丈夫か」を考える前に、まず医療的な評価が必要な症状を除外することが最優先です。
腰椎椎間板ヘルニアを繰り返さないために見るべきこと
腰椎椎間板ヘルニアと診断されたときに大切なのは、「画像にヘルニアがある」という情報だけにとらわれないことです。
現在、
どの動きで症状が出るのか。
立つ、座る、前屈する、歩くときに身体をどう使っているのか。
股関節や胸郭が十分に動かず、腰へ負担を集中させていないか。
こうした実際の動作を確認することで、運動で見直すべきポイントが見えてきます。
Healthcare Studio ileでは、医療機関で診断・治療を受けたうえで運動が可能な方に対して、腰だけではなく背骨・骨盤・股関節など身体全体の動きと、日常生活での動作を確認しながら運動を組み立てています。
ピラティスやトレーニングそのものを目的にするのではなく、「なぜ腰に負担が集まっているのか」を評価し、必要な動きを練習するための手段として使います。
名古屋・栄・矢場町周辺で、腰痛を繰り返していて運動方法に迷っている方は、名古屋で腰痛改善を目指すマシンピラティスも参考にしてください。
自分だけでは運動してよい状態なのか、どの動きを見直す必要があるのか判断しにくい場合は、まず医療機関で必要な診断を受けたうえで、身体の動きを一度確認してみることをおすすめします。
参考文献
- 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会. 『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版』. 南江堂, 2021. 現在Mindsで最新版として公開されています。
- Zou T, et al. Incidence of Spontaneous Resorption of Lumbar Disc Herniation: A Meta-analysis. Clinical Spine Surgery. 2024. 保存療法で経過をみた腰椎椎間板ヘルニアの自然吸収率と、ヘルニア形態による違いを検討したメタ解析です。
- Arslan S, Ülger Ö. The effect of exercise in the treatment of lumbar disc herniation: a systematic review. Acta Neurologica Belgica. 2025;125(5):1209-1224. 12件のRCT、計880人を対象に、腰椎椎間板ヘルニアへの運動療法を検討しています。
- 日本整形外科学会. 「腰椎椎間板ヘルニア」症状・病気をしらべる. 腰椎椎間板ヘルニアについて一般向け情報を公開しています。
著者・監修者プロフィール
著者・監修者:水野豪司
理学療法士/Healthcare Studio ile 代表
腰痛や姿勢などの悩みに対して、痛みのある場所だけを見るのではなく、背骨・胸郭・骨盤・股関節など身体全体のつながりと、立つ・座る・前屈する・歩くといった実際の動作を確認することを大切にしています。
Healthcare Studio ileでは、医療機関での診断・治療が必要な状態と運動で身体を見直す段階を分けたうえで、一人ひとりの身体に合わせてピラティスやトレーニングを活用しています。
