「体重はそれほど増えていないのに、お腹だけ前に出て見える」
「腹筋をしているのに、下腹のぽっこり感がなかなか変わらない」
「お腹に力を入れればへこむけれど、力を抜いて立つとまた前へ出る」
このような場合、脂肪だけではなく、普段の立ち方がお腹の見え方に影響していることがあります。
特に確認したいのが、胸郭・骨盤・股関節の位置関係です。
たとえば、骨盤を身体より前へ押し出して上半身を後ろへ倒して立つと、お腹も身体の前方へ位置しやすくなります。
反対に、姿勢を良くしようとして胸を張りすぎ、肋骨とお腹を前へ突き出している人もいます。
つまり、
「お腹が出ている=腹筋が弱い」
とは限りません。
体脂肪を減らすことが必要な人もいれば、立ち方や身体の使い方を見直すことで、お腹の見え方が変わる人もいます。
ぽっこりお腹が気になるときは、腹筋を増やす前に「自分がどんな姿勢で立っているのか」を確認してみましょう。
姿勢が変わると、お腹の見え方も変わる
お腹の見た目には、体脂肪量が大きく関係します。
また、食後の膨満感や便通などによって、一時的にお腹が張って見えることもあります。
その一方で、身体の各部位がどこに位置しているかによっても、横から見たシルエットは変化します。
試しに立った状態で、骨盤を身体より少し前へ押し出してみてください。
そのまま上半身を後ろへ倒してバランスを取ると、お腹が前へ突き出したように見えやすくなります。
今度は姿勢を良くしようとして、胸を強く張ってみてください。
肋骨が前へ出て腰の反りが強くなり、お腹まで前へ押し出される人もいます。
つまり同じ「お腹が出て見える」という悩みでも、その身体の状態は一つではありません。
だからこそ、お腹だけを見るのではなく、
胸郭はどこにあるのか。
骨盤はどこにあるのか。
その上でどう立っているのか。
まで確認する必要があります。
お腹が前に出て見える代表的な姿勢「スウェイバック」
お腹が前へ出て見えやすい姿勢の一つに、スウェイバックと呼ばれる立ち方があります。
スウェイバックでは、骨盤が身体の前方へ移動し、そのバランスを取るように上半身が後ろへ位置します。

横から見ると、
頭・胸郭が後ろ。
骨盤が前。
お腹がその間から前へ出る。
というシルエットになりやすくなります。
ここでよく、
「スウェイバックではインナーマッスルが働いていない」
と言われることがあります。
しかし、筋肉が完全にOFFになっているわけではありません。
健康な成人を対象にした研究では、自然な直立立位と比べ、スウェイバック姿勢では腹横筋の厚みが小さかったことが報告されています。ただし、この研究は超音波による筋厚を筋活動の間接的な指標として比較したもので、「腹横筋がまったく働かない」と示したものではありません。
大切なのは、
「インナーマッスルが使えているか」
だけではなく、
身体全体で無理なく立てているか
を見ることです。
「骨盤が前に出ると内臓が落ちる」わけではない
ぽっこりお腹について、
「骨盤が前に出ると内臓を支えられなくなって、内臓が下へ落ちる」
という説明を見かけることがあります。
しかし、姿勢によるぽっこりお腹を「内臓が落ちる」という仕組みだけで説明する必要はありません。
姿勢でまず考えたいのは、身体の位置関係です。
骨盤を前へ押し出し、上半身をその後ろへ置けば、その間にある腹部も前方へ位置しやすくなります。
そのため、横から見たときにお腹が突き出して見えます。
この状態で、
「お腹をへこませよう」
と腹部だけを強く締めても、力を抜けば元の立ち方に戻ることがあります。
それなら、お腹を締め続けることより、
「なぜ骨盤を前へ押し出して立っているのか」
を見直した方が、本来の問題に近づけます。
反り腰でもお腹が出て見えることがある
お腹が前へ出て見える姿勢は、スウェイバックだけではありません。
腰を反り、胸や肋骨を前へ突き出して立っている人でも、お腹が目立つことがあります。
特に、
「姿勢を良くしよう」
と思った瞬間に、
胸を強く張る。
みぞおちが前へ出る。
肋骨が前へ開く。
腰の反りが強くなる。
という人は確認が必要です。
見た目では背筋が伸びたように感じても、胸郭を起こす代わりに腰を反らせて姿勢を作っている可能性があります。
このタイプでは、
「もっとお腹に力を入れる」
より、
腰を反らなくても胸郭を動かし、身体を支えられるか
を見直します。
実際に胸を張ることで腰を反らせていたケースは、胸椎伸展と反り腰のビフォーアフターで紹介しています。
反り腰そのものについて詳しく知りたい方は、反り腰の原因と改善法|骨盤・股関節を整えるピラティスアプローチも参考にしてください。
肋骨が前へ出る姿勢も確認する
お腹が目立つ人の中には、下側の肋骨が前へ突き出して見える人もいます。
一般に「リブフレア」と呼ばれることもあります。
このタイプでは、
胸を張る。
肋骨が前へ出る。
腰が反る。
お腹まで前方へ位置する。
という姿勢になっていることがあります。
だからといって、
「肋骨を下へ閉じ続ければいい」
というわけでもありません。
胸郭は呼吸のたびに動く場所です。
肋骨を固定するのではなく、呼吸に合わせて胸郭が動きながら、その状態で身体を支えられることが大切です。
ぽっこりお腹を腹横筋だけの問題にしない
ぽっこりお腹が気になると、
「腹横筋を鍛えましょう」
と言われることがあります。
腹横筋は、お腹の深い場所にある筋肉です。

もちろん、腹横筋は体幹のコントロールに関わります。
しかし、身体を支えているのは腹横筋一つではありません。
横隔膜をはじめとする呼吸筋や複数の腹筋群、背部の筋肉などが、その場面に応じて協調して働きます。
実際、四肢運動による姿勢制御では、横隔膜と腹筋群が協調し、腹腔内圧の調整に関わることが報告されています。
つまり、
「腹横筋だけを強く収縮できればいい」
のではありません。
呼吸をしながら身体を支え、その状態で腕や脚を動かせることが大切です。
腹筋を頑張ってもぽっこりお腹が変わらない理由
腹筋運動をすること自体が悪いわけではありません。
腹筋を鍛えることが必要な人もいます。
ただ、1日10分腹筋をしたあとに、
骨盤を前へ押し出して何時間も立つ。
胸を張って腰を反る。
長時間同じ姿勢で座る。
歩くときも同じ姿勢を続ける。
という状態なら、普段のお腹の見え方を作っている身体の使い方は変わっていません。
これは、
「腹筋をしても意味がない」
という話ではありません。
エクササイズでできるようになった身体の使い方を、最終的には立つ・歩く・しゃがむといった普段の動作へつなげる必要があるということです。
自分のお腹が出て見える理由を3つのポイントから確認する
1.体重やウエストそのものが増えていないか
まず、すべてを姿勢のせいにしないことが大切です。
最近体重や体脂肪が増えているのであれば、脂肪量もお腹の見た目に影響します。
逆に、
体重はほとんど変わっていない。
仰向けになると目立ちにくい。
立ち方によってお腹の見え方が大きく変わる。
という場合は、姿勢も確認してみる価値があります。
また、腹痛や強い膨満感、便通の大きな変化、急な腹部膨隆などがある場合は、姿勢だけの問題と考えず医療機関へ相談してください。
2.力を抜いて横から立ってみる
鏡の前で、まず「良い姿勢」を作らずに普段通り立ってください。
その状態で、
骨盤を身体より前へ押し出していないか。
上半身が骨盤より後ろへ倒れていないか。
胸や肋骨を前へ突き出していないか。
腰を強く反っていないか。
を確認します。
正しい姿勢を探すことが目的ではありません。
自分が普段、どのようにバランスを取って立っているのかを見るためのチェックです。
3.動いたときにお腹や腰がどう変わるかを見る
立っているだけでは分からないこともあります。
両腕を頭の上へ上げる。
軽くスクワットする。
片脚で立つ。
数歩歩いてみる。
こうした動きを行ったときに、
腕を上げると肋骨とお腹が前へ出る。
スクワットすると腰が大きく反る。
片脚になると骨盤を前へ押し出す。
といった変化が出る人もいます。
姿勢を改善するときは、止まっているときの形だけでなく、この「動いたときに何が起こるのか」を確認することが重要です。
立位や座位の姿勢によって体幹筋の活動パターンが変化することも研究で確認されています。
自宅でできるぽっこりお腹の姿勢エクササイズ
ここからは、お腹を追い込む腹筋運動ではなく、身体の使い方を確認するための運動を紹介します。
1.仰向けで呼吸を確認する
仰向けになり、両膝を立てます。
腰は床へ強く押しつけず、楽に呼吸できる位置を探してください。
鼻から息を吸います。
このとき、お腹の前だけを大きく膨らませるのではなく、
脇腹。
背中側。
胸郭。
まで広がる感覚を確認します。
そのあと、口からゆっくり息を吐きます。
息を吐いたあとも、お腹を強くへこませ続ける必要はありません。
まずは5呼吸程度から行います。
ここでの目的はウエストを細くすることではありません。
呼吸を止めずに、胸郭と腹部を動かせるか確認することです。
2.呼吸を続けながら脚を動かす
次に、仰向けの姿勢から片脚を少し持ち上げます。
膝を曲げたまま、足を床から数センチ浮かせる程度で構いません。
このとき、
脚を上げた瞬間に腰が大きく反る。
息が止まる。
お腹を強くへこませなければ動けない。
首や肩に力が入る。
という場合は、動きを小さくします。
難しければ、足を浮かせず、床の上で片脚を滑らせるところから始めても構いません。
目標は難しい運動をすることではありません。
呼吸を続けながら、腰や胸郭の位置を大きく崩さず脚を動かせることです。
動画を見ながら一緒に確認したい方へ
文章だけでは動き方が分かりにくい方は、現在掲載している動画を見ながら一緒に確認してみてください。
ただし、この動画も、
「この運動をすればお腹がへこむ」
「腹横筋だけを鍛えればぽっこりお腹が改善する」
という意味ではありません。
呼吸を続けながら腹部を使い、身体を支える感覚を確認する一つの練習として行ってください。
動画とまったく同じ形にする必要はありません。
息を止めていないか。
腰を強く反っていないか。
首や肩へ余計な力が入っていないか。
を確認しながら行います。
エクササイズのあとは「立つ」まで確認する
仰向けでうまくできても、それだけでは終わりません。
日常生活の多くは、立ったり、座ったり、歩いたりして過ごします。
そのため最終的には、
呼吸を止めずに立てる。
骨盤を前へ押し出さず身体を支えられる。
胸を張らなくても上半身を起こせる。
腰を大きく反らずにスクワットできる。
股関節を使って歩ける。
といった動作へつなげます。
「寝た状態ならお腹に力を入れられる」
だけではなく、
「普段の姿勢でも身体を使える」
ところまでつなげることが大切です。
「腹横筋を使えている感覚」がなくても気にしすぎない
「腹横筋が使えている感じが分かりません」
という方もいます。
でも、腹横筋だけを自由自在に感じ取れるようになることが目標ではありません。
身体は、一つの筋肉だけを使って立ったり歩いたりしているわけではありません。
姿勢が変われば体幹筋の活動も変化し、呼吸と姿勢制御でも複数の筋肉が協調します。
だから、
「腹横筋に効いている感じがするか」
だけで判断する必要はありません。
それよりも、
以前より楽に立てる。
呼吸を止めなくても身体を支えられる。
腕を上げても腰を大きく反らなくなった。
スクワットでお腹を前へ突き出しにくくなった。
といった実際の動作の変化を見ていきます。
ぽっこりお腹を姿勢から見直すなら、腹筋より先に立ち方を見る
ぽっこりお腹の原因は一つではありません。
体脂肪が関係する人もいれば、食事や腹部の張りが関係する人もいます。
そして、体重がそれほど変わっていないのに立ったときだけお腹が前へ出て見える人では、姿勢も確認する価値があります。
特に、
骨盤を前へ押し出している。
上半身を後ろへ倒している。
胸を張ると腰が反る。
肋骨とお腹が前へ突き出る。
という場合は、
「もっと腹筋をする」
より先に、今どのように身体を支えているのかを確認してみてください。
ぽっこりお腹だから腹筋。
反り腰だから骨盤を丸める。
猫背だから胸を張る。
というように、見た目だけから一つの運動を決めると、その人に本当に必要な動きから離れてしまうことがあります。
名古屋・栄・矢場町で姿勢やぽっこりお腹を見直したい方へ

Healthcare Studio ileでは、ぽっこりお腹を見て、
「腹横筋が弱いから鍛えましょう」
と一つの原因だけで判断することはありません。
立った姿勢だけでなく、
前屈。
スクワット。
片脚立ち。
歩行。
腕を上げる動作。
などを実際に確認します。
その中で、胸郭・背骨・骨盤・股関節がどのようにつながって動いているのかを見ます。
必要なのが胸郭の動きなのか。
股関節を使う練習なのか。
体幹を支える練習なのか。
人によって違います。
そのうえで、一人ひとりに必要な身体の使い方を練習する手段として、マシンピラティスやトレーニングを取り入れています。
「体重は変わっていないのに、お腹だけ前へ出て見える」
「腹筋を頑張っても姿勢が変わらない」
「自分が反り腰なのか、スウェイバックなのかもよく分からない」
という方は、名古屋・栄で姿勢を動作から見直すパーソナルマシンピラティスもご覧ください。
お腹だけを見て運動を増やす前に、一度、自分が普段どのように立ち、動いているのかを確認してみてください。
参考文献
- Reeve A, Dilley A. Effects of posture on the thickness of transversus abdominis in pain-free subjects. Manual Therapy. 2009;14(6):679-684.
健康な成人を対象に、複数の姿勢における腹横筋厚を超音波で比較した研究です。直立立位に比べてスウェイバック立位では腹横筋厚が小さいことが報告されています。 - O’Sullivan PB, Grahamslaw KM, Kendell M, et al. The effect of different standing and sitting postures on trunk muscle activity in a pain-free population. Spine. 2002;27(11):1238-1244.
立位・座位姿勢の違いによって体幹筋活動が変化することを検討した研究です。 - Hodges PW, Gandevia SC. Changes in intra-abdominal pressure during postural and respiratory activation of the human diaphragm. Journal of Applied Physiology. 2000;89(3):967-976.
姿勢制御時に横隔膜と腹筋群が協調し、腹腔内圧の調整に関与することを示した研究です。
著者・監修者プロフィール
著者・監修者:水野豪司
理学療法士/Healthcare Studio ile 代表
姿勢や身体の見た目を確認するときに、「腹筋が弱い」「骨盤が歪んでいる」と一つの部分だけで判断するのではなく、背骨・胸郭・骨盤・股関節など身体全体のつながりと、立つ・歩く・しゃがむといった実際の動作を見ることを大切にしています。
Healthcare Studio ileでは、一人ひとりの身体を確認したうえで、ピラティスやトレーニングを身体の使い方を変えるための手段として活用しています。
