夕方になると首の付け根が重くなり、そこから後頭部へ痛みが広がってくる。
頭痛薬を飲むと一度は楽になるものの、パソコン作業を続けていると、また同じ場所が痛くなる。
このような頭痛では、痛む頭だけでなく、ストレートネックによって首へかかっている負担を見直す必要があります。
特に、
・デスクワーク後に頭痛が起こる
・首の付け根から後頭部へ痛みが広がる
・首を動かすと頭まで痛みが響く
・頭痛と一緒に首や肩も重くなる
という人は、頭が身体より前へ出た状態が、頭痛を繰り返す一因になっていることがあります。
ただし、必要なのは顎を強く引くことではありません。
首だけを無理に後ろへ戻すのではなく、胸椎、肋骨、肩甲骨、骨盤まで整え、頭が自然に背骨の上へ戻れる状態を作ることが大切です。
ストレートネックで頭痛が起こるのはなぜ?
一般的にストレートネックというと、首の骨のカーブが少なくなった状態をイメージするかもしれません。
しかし、頭痛との関係を考えるうえでは、首の形だけを見るのでは不十分です。
大切なのは、立っているときや座っているときに、頭が身体より前へ出たままになっていないかという点です。
頭が前に出ると首の後ろが働き続ける
頭が身体より前へ移動すると、そのままでは頭がさらに前へ倒れてしまいます。
そこで、首の後ろにある筋肉は、頭が落ちないように後ろから引き止め続けます。
本来であれば、頭は背骨の上に乗り、首の筋肉が必要以上に頑張らなくても支えられる状態が理想です。
ところが、頭が前へ出ている人は、座っているだけでも首の後ろが働き続けます。
買い物袋を身体から離して持つと、腕が疲れやすくなるのと似ています。頭も身体から離れるほど、首が支えなければならない負担が大きくなるのです。
前を見るために首の付け根が反りやすくなる
頭が前へ出ると、顔は自然に下を向きます。
しかし、パソコンの画面や正面を見るためには、目線を前へ戻さなければなりません。
その結果、首全体は前へ倒れているのに、後頭部のすぐ下だけを反らして前を見る姿勢になりやすくなります。
このとき負担が集中するのが、後頭部と首の境目にある「後頭下筋群」という小さな筋肉です。
後頭下筋群は、頭の細かな位置を調整する重要な筋肉ですが、一日中頭を支え続けることには適していません。
頸性頭痛のある人を対象とした研究では、健康な人と比べて後頭下筋群の硬さが強いことが報告されています。
首の問題が後頭部や目の奥の痛みとして現れる
首から始まる頭痛は「頸性頭痛」と呼ばれます。
これは、首の骨や関節、筋肉などから生じた痛みが、後頭部、側頭部、目の周囲などへ広がる頭痛です。
国際頭痛分類でも、首の動きによって頭痛が悪化すること、首の可動域が制限されていること、首の状態が改善すると頭痛も軽減することなどが、首と頭痛との関係を判断する材料として挙げられています。
そのため、首の付け根を押したときに後頭部まで痛みが響く人や、首を回したときに頭痛が強くなる人は、痛む頭だけでなく首の機能を確認する必要があります。
薬やマッサージで楽になっても頭痛を繰り返す理由
頭痛が起きたときに、薬を飲んだり、首やこめかみを揉んだりすること自体が悪いわけではありません。
痛みが強いときに症状を和らげることは必要です。
しかし、頭が前へ出た姿勢が変わらなければ、首の筋肉は再び頭を支え始めます。
首を揉んで筋肉が一時的に緩んでも、その直後に同じ姿勢でパソコンやスマートフォンを使えば、首の後ろには同じ負担がかかります。
「施術を受けた日は楽だけれど、数日すると戻ってしまう」という人は、筋肉の硬さだけを問題にしている可能性があります。
筋肉がなぜ硬くなったのかまで考えなければ、症状は繰り返しやすくなります。
頸性頭痛に対する運動療法や徒手療法を検討した研究では、頭痛の強さや頻度、生活への支障が軽減することが報告されています。一方で、どの方法でも同じように改善するわけではなく、首や肩甲骨の状態に合わせて運動を選ぶことが重要です。
ストレートネックは顎を引くだけでは改善しない
ストレートネックを改善しようとして、顎を強く後ろへ引いていませんか。
背中が丸まり、胸郭が後ろへ倒れたまま頭だけを後ろへ引くと、首の前後から力を入れて姿勢を固めることになります。
この状態では、見た目は一時的に真っすぐになっても、首の付け根が詰まり、呼吸もしにくくなります。
これは良い姿勢ではありません。
良い姿勢とは、胸を張ったり顎を引いたりして無理に作るものではなく、骨盤の上に胸郭が乗り、その上に頭が自然に乗っている状態です。
頭が前へ出ているからといって、頭だけに原因があるとは限りません。
ストレートネックは、胸椎や肋骨、骨盤の位置を補うために起きていることもあります。
頭痛を軽くするために本当に見直したい身体の部分
胸椎が伸びるか
胸椎とは、背中にある背骨の部分です。
デスクワークで背中が丸まったままになると、胸郭全体が後ろへ倒れます。
その状態で前を見るためには、頭を前へ出し、首の付け根を反らさなければなりません。
この場合、頭だけを後ろへ戻しても長く保つことはできません。
頭が自然に戻るためには、まず胸椎が起き上がり、胸郭を骨盤の上に乗せられることが必要です。
肋骨が動き、無理なく呼吸できるか
肋骨の動きが小さくなると、胸郭は硬い箱のようになります。
呼吸をするたびに肩が上がったり、首の筋肉へ力が入ったりする人は、首が呼吸まで手伝っている状態です。
この状態で姿勢を良くしようと胸を張ると、さらに首や背中へ力が入りやすくなります。
必要なのは胸を突き出すことではなく、息を吐いたときに肋骨が下がり、吸ったときに背中や脇へ広がることです。
肋骨が動きやすくなると、首の力を抜いたまま胸郭を支えやすくなります。
腕と肩甲骨を支えられているか
パソコン作業中に、腕を身体の前へ伸ばし続けていると、その腕の重さを首や肩で支えることになります。
キーボードが遠い、肘が浮いている、机が高すぎるといった環境では、肩が上がり、首の付け根へ力が入りやすくなります。
頭の位置だけでなく、腕をどこで支えているかも確認してください。
肘を机やアームレストで支え、キーボードを身体へ近づけるだけでも、首の負担は変わります。
骨盤が後ろへ倒れていないか
椅子へ浅く座り、お尻が前へ滑っている人は、骨盤が後ろへ倒れやすくなります。
骨盤が後ろへ倒れると背中が丸まり、胸郭が後ろへ落ち、バランスを取るために頭が前へ出ます。
つまり、首の姿勢を作っている原因が、座り方に隠れていることもあるのです。
足が床に届いているか、お尻の左右へ均等に体重が乗っているか、骨盤を無理に丸めたり反らしたりしていないかを確認してみましょう。
ストレートネックが頭痛に関係しているか確認するポイント
横から撮った写真で耳が肩より前にあることは、一つの目安になります。
ただし、写真だけで頭痛の原因を判断することはできません。
見た目だけでなく、いつ、どのような動作で頭痛が起きるのかを確認することが重要です。
次の項目に当てはまる人は、首や姿勢との関係を一度確認してみてください。
・デスクワークやスマートフォンの後に悪化する
・首の付け根から後頭部へ痛みが広がる
・首を回したり上を向いたりすると頭痛が強くなる
・頭痛がある側の首や肩も硬くなる
・夕方になるほど症状が強くなる
・首を揉むと一時的に楽になるが、すぐに戻る
・背中を起こすと首の動きが少し楽になる
大切なのは、ストレートネックという見た目だけで判断しないことです。
首を動かしたときの痛み、胸椎の動き、呼吸、肩甲骨、座り方まで確認することで、頭痛を繰り返している理由が見えてきます。
デスクワーク中にできる姿勢の見直し方
頭痛が起きるまで同じ姿勢を続けるのではなく、作業の区切りごとに姿勢をリセットしてみましょう。
まず、左右の足裏を床へつけます。
お尻を椅子の奥へ入れ、腰を強く反らさず、骨盤の上に胸郭を乗せるように座ります。
次に、肘や前腕を机へ置き、肩の力を抜きます。
その状態でゆっくり息を吐き、開きすぎている肋骨を自然に下げます。
最後に、顎を後ろへ強く引くのではなく、小さくうなずくように頭の位置を整えます。
首の後ろを伸ばそうとして力を入れる必要はありません。
頭を無理に引くのではなく、頭が戻りやすい土台を作ることがポイントです。
この姿勢で首の詰まりや頭痛が強くなる場合は、無理に続けないでください。
すぐに医療機関へ相談したほうがよい頭痛
すべての頭痛がストレートネックによるものではありません。
次のような症状がある場合は、姿勢改善やマッサージで様子を見ず、速やかに医療機関へ相談してください。
・突然起きた激しい頭痛
・今までに経験したことがない強い頭痛
・顔や手足のしびれ、力の入りにくさを伴う
・ろれつが回らない、言葉が出にくい
・急に見えにくくなった、二重に見える
・高熱、意識の変化、けいれんを伴う
・頭をぶつけた後から続いている
・頭痛の頻度や強さが急に増えている
厚生労働省も、突然の激しい頭痛や、顔・手足のしびれ、ろれつの回りにくさなどがある場合には、救急車を呼ぶことを勧めています。
首だけではなく、頭痛を生んでいる身体の使い方を確認する
デスクワーク後に首の付け根から後頭部へ広がり、姿勢や首の動きによって変化する頭痛では、ストレートネックを含む首の負担を見直す必要があります。
ただし、ストレートネックを改善することは、顎を引いて首を真っすぐに見せることではありません。
胸椎が動き、肋骨が呼吸に合わせて動き、骨盤の上に胸郭と頭が自然に乗る状態を作ることが重要です。
Healthcare Studio ileでは、頭の位置だけでなく、首の動き、胸椎、肋骨、肩甲骨、骨盤、呼吸、実際の座り方や動作まで確認します。
ピラティスやトレーニングは、決められた運動をこなすためのものではありません。
首が頭を必死に支えなくてもよい身体の使い方を身につけ、頭痛を繰り返しにくい状態を目指すための手段です。
医療機関で重大な異常がないことを確認しているものの、デスクワーク後の頭痛や首の重さを繰り返している人は、痛む場所だけでなく、なぜ首へ負担が集まっているのかを一度確認してみてください。
名古屋・栄、矢場町のHealthcare Studio ileでは、一人ひとりの姿勢と動作を確認し、身体の状態に合わせたマンツーマンサポートを行っています。
参考文献
- Headache Classification Committee of the International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition. Cephalalgia. 2018;38(1):1-211.
- Tavakkoli M, Bahrpeyma F. Elastic Modulus of Suboccipital Muscles, Cervical Range of Motion, and Forward Head Posture in Cervicogenic Headache. Journal of Biomedical Physics and Engineering. 2023;13(5).
- Bini P, Hohenschurz-Schmidt D, Masullo V, Pitt D, Draper-Rodi J. The effectiveness of manual and exercise therapy on headache intensity and frequency among patients with cervicogenic headache: a systematic review and meta-analysis. Chiropractic & Manual Therapies. 2022;30:49.
- Jull G, Trott P, Potter H, et al. A randomized controlled trial of exercise and manipulative therapy for cervicogenic headache. Spine. 2002;27(17):1835-1843.
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方 こんな時は迷わず119へ」
著者・監修者プロフィール
水野豪司
理学療法士/ピラティスインストラクター/Healthcare Studio ile代表
名古屋市栄のHealthcare Studio ileで、姿勢の悩み、肩こりや腰痛などの身体の不調に対するマンツーマンサポートを行っています。
痛みがある場所だけを見るのではなく、胸郭や骨盤、呼吸、足元まで含めた全身のつながりと、立つ・座る・歩くといった実際の動作を確認することを重視しています。
ピラティスやトレーニングを目的にするのではなく、一人ひとり異なる不調の原因を考え、その場しのぎではない身体づくりをサポートしています。
